広告進行管理の原点はここにあった!展示会のために「カカオ」を探し回った話。【新人時代のエピソード】

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はじめに:20年近く前、駆け出しの僕が向き合った“謎のミッション”

広告業界に入って間もない頃、僕は進行管理として右も左もわからないまま、現場を走り回る毎日を送っていました。
そんなある日、あるお客様からの依頼が舞い込んできました。

「展示会で使いたいから、カカオを手配してほしい

カカオ?
一瞬、頭の中が「???」でいっぱいになりました。
「チョコ」ではなく「カカオ」。しかも食べるわけではなく、展示会の装飾用として「実物のカカオ」が欲しいという話だったのです。


展示会用に“本物のカカオ”を手配せよ!

依頼主はチョコレート関連の企業。
自社ブースで世界観を演出するために、本物のカカオをディスプレイしたい、という希望でした。
なるほど、確かにチョコの原料としてカカオを飾るのはわかる。ただ、それをどう手配するのか?

当然、当時の自分にはツテも知識もなく、
「とりあえずネットで調べてみよう」
くらいの軽い気持ちで調査を始めました。


カカオは日本にない!?次々と壁にぶつかる

調べていくうちに、すぐに大きな問題に直面しました。

カカオは日本では栽培されていない。

そう、カカオは赤道近くの高温多湿な地域でしか育たない作物。
当時(20年前)の日本では、生のカカオを見つけることはほぼ不可能に近かったのです。

さらに追い打ちをかけるように、ネット検索でヒットするのはチョコメーカーばかり。
当然ながら「原材料のカカオだけを分けてもらえる」なんて都合のいい話はなく、途方に暮れていきました。


ヒントは“商社”にあった:とにかく電話してみる

もはや打つ手なし——そう思いながら検索を繰り返していたとき、ある商社のサイトに「カカオ」の文字を見つけました。
ダメ元で電話をかけてみることに。

「あの…カカオを探してまして…展示会で飾りとして使いたいんですけど…」

電話口の担当者の頭には、きっと「???」が浮かんでいたことでしょう。
それでも丁寧に対応してくれ、「確認して折り返します」とのこと。
正直、全く期待はしていませんでした。

しかし、翌日——

「大丈夫ですよ。どれくらい必要ですか?」

まさかのOK。
ざっくり500グラムくらい、小さなカゴに収まる程度の量をお願いしました。
「費用は?」と聞くと、なんと…

「費用は要りません」

驚きました。商社の方の心意気に、本当に頭が下がりました。

気づいたミス:「納期、聞いてない!」

電話を切ってから気づきました。納期を聞き忘れた。

慌てて再度電話。

「大変失礼ですが、いつ頃ご手配いただけそうでしょうか……?」

「1週間以内にはお届けできると思いますよ。」

結果、3日後には立派なカカオの実が届きました。


納品された“カカオ”を見て思ったこと

箱を開けて中身を確認した瞬間、思わず手が止まりました。

「これが…カカオか。」

ゴツゴツした外皮に包まれた、まるで木の実のようなカカオポッド。
そして、鼻を近づけると——

「あ、チョコの匂いがする…!」

当たり前かもしれませんが、原料そのものからチョコの香りが漂ってくることに、妙に感動したのを覚えています。

人生でカカオを見たのは、このときが最初で最後
だからこそ、あの体験は今でも僕の記憶の中に鮮やかに残っています。


無事納品!お客様の笑顔に救われた

納品を終え、お客様のブースはイメージ通りの雰囲気に仕上がりました。
何気ない一言から始まった「カカオ探し」でしたが、最後にお礼の言葉をいただいたとき、
この仕事のやりがいや面白さを心から実感しました。

「ああ、こういう積み重ねが“信頼”になるんだな」

若手時代に必死で動いた経験は、今の自分の“軸”のひとつになっています。

その後のお礼と「お金の話」

後日、改めてお礼の電話を入れました。
何度も「本当に費用をお支払いできないか」と聞きましたが、商社の担当者は一貫してこう言ってくれました。

「気にしないでください。何かのお役に立てたならそれで充分です。」

たった数百グラムのカカオかもしれない。
でも、その対応には、「仕事の本質」や「人とのつながりの大切さ」が込められているように感じました。

あの経験が教えてくれた3つのこと

1. 「とにかく動いてみる」ことの価値

正直、最初はどうしたらいいか分からなかった。
でも、ネットで調べて、電話して、断られて、また探して……その繰り返しが、結果につながりました。

「分かりません」と言うのは簡単。
でも、一歩踏み出せば、世界が変わるかもしれない。


2. 「無理難題こそ、信頼を生むチャンス」

今回のカカオ探しは、誰かにとっては“雑務”かもしれません。
でも、困難なことをやり切った経験は、確かな「信頼」に変わりました。

「この人に任せれば、何とかしてくれる」
それは広告業界で生きていく上で、何よりの武器になります。


3. 「優しさ」は、受け取ったら次の誰かへ渡すもの

商社の担当者の方の“親切”がなければ、この仕事は成功しませんでした。
だから今、後輩や仲間が困っていたら、あのとき自分が受け取った優しさを“返す”ようにしています。


20年後の今、日本でもカカオが育てられるように

あれから20年近くが経ち、世の中も大きく変わりました。

最近、小笠原諸島など一部の地域で日本産カカオの栽培が成功したというニュースを見かけました。
日本産のカカオを使ったチョコレートも登場し、少しずつ話題になっています。

「あのときあんなに苦労して探したカカオが、今は日本で作れる時代になったのか」

便利になった分、あのときのように“人の善意”や“偶然の出会い”に助けられる場面は少なくなったかもしれません。

でも僕は、あの遠回りした経験があったからこそ、進行管理の仕事の本質に気づけたと思っています。


新人時代の苦労が、自分の“宝”になる

今、新しく広告業界に飛び込もうとしている人、進行管理として働き始めたばかりの人。
そんな方に伝えたいのは、こんな一言です。

「どんな仕事にも、意味がある」

「これ、自分の仕事じゃないのでは?」
「調べても出てこないから、無理なんじゃ…?」

そんなふうに感じたときこそ、一歩踏み込んで調べてみる・聞いてみる・頼ってみる
その積み重ねが、信頼を生み、自分の経験として蓄積されていきます。

あの“カカオ探し”がなかったら、僕の進行管理人生はもっと味気ないものになっていたかもしれません。

おわりに:広告の仕事は、物じゃなく「人」でできている

この業界には、企画・制作・進行・営業とさまざまな役割があります。
でも根本にあるのは「人と人との信頼」だと思っています。

あの日、カカオを無償で送ってくれた商社の方。
自分を信じて任せてくれたクライアント。
必死に手配しようと動いた若き日の自分。

すべての人との関わりがあって、広告は完成する。

そしてそれは、いまも変わらない“仕事の本質”なのです。


最後に

あなたにも、思い出の“新人時代の仕事”はありますか?
もしあれば、ぜひ思い出してみてください。
きっと、今のあなたをつくった小さな“原点”が、そこにあるはずです。

この記事を書いた人

はじめまして、やまとです。
広告業界で20年、営業から制作進行管理まで幅広く経験してきました。現在は、広告制作の現場で「効率」と「信頼」を何より大切にする進行管理として働いています。

進行管理のプロフェッショナルとして、現場全体をスムーズに回す調整力と段取り力には自信があります。「納期が間に合わない」「無茶な要求された」「もっと早く終わらせたい」──そんな悩みを抱える人に向けて、現場のリアルなノウハウを発信中です。

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