はじめに:納期1ヶ月の案件にまさかの追加発注!?
「ピンバッジ3000個、納期は校了から約1ヶ月でお願いします」
ある日、そんな依頼を顧客から受けた。仕様はすでに決まっており、生産は中国。商社とも連携し、中国側の祝日やスケジュールを確認した上で、順調に進行していた。
ところが、納品の1週間前になって、思いもよらぬ連絡が入る。
「すみません、急きょ1000個追加できますか?」
しかも納期は当初のまま。追加分のデザインは多少変わっても構わないという条件だったが、中国での生産ではどうやっても間に合わない。
「日本国内で対応するしかない」——そう判断し、ここから進行管理としての“本当の仕事”が始まった。
第1章:中国生産で順調だった案件に突如舞い込む追加依頼
この案件は、顧客からピンバッジ3000個の制作を依頼されたことから始まった。
中国の工場で生産し、日本に輸送するスケジュール。スムーズに進めば問題ない案件で、下版までも無事完了し、量産体制にも入っていた。
そんなある日、電話が鳴る。
「実は追加で1000個、どうしても必要になってしまって…」
納期まで残り1週間。もちろん、中国で追加生産する時間はない。
「日本で作って間に合わせるしかない」
顧客からは「追加分の種類は異なっても良い」と了承を得た。
ただ、どこで、どうやって作るのか。
ネットで調べても、納期に間に合う国内業者が見つからない。
第2章:国内での対応を模索するも…現実は厳しい
検索で出てきた製作会社に片っ端から問い合わせてみる。
しかし、どの会社もこう答える。
「最低でも10日はかかりますね」 「1000個となると…ウチでは無理です」
その日だけで数社に断られ、どんどん時間だけが過ぎていく。
諦めそうになりながらも、ふと考え直す。
ここで進行管理として重要な三つの引き出しを使うことに。
・デザインはすでにできている:すぐに下版できるため、通常よりも制作期間を短縮できる。これは、日頃から入稿ルールを理解している進行管理ならではの強み。
・チャーター便の使用が可能:通常配送よりも高額にはなるが、緊急時に輸送時間を短縮できる。この知識も、進行管理の経験と情報収集力の成果だ。
・価格は追加分として別見積もり請求できる:ここは営業に掛け合い、条件を引き出す。さらに、営業からお客様に対して譲歩案を提出してもらう形を取ることで、現場負担を最小限に抑える。
(お金よりも納期優先で交渉できるようにする)
この三つのカードを最大限に活かし、突破口を探ることにした。
第3章:藁にもすがる思いで、ひたすら電話をかけ続けた
検索結果の上から順に、電話をかけていく。
「デザインは完成済みで、即下版可能です」 「チャーター便も使用できます」 「価格は割増料金支払います」
この3点を強みに、1社ずつ丁寧に事情を説明。
断られても、次へ。 断られても、また次へ。
十数社目。ようやく光が見えた。
「デザインがあるなら…間に合うかもしれません。一度データを見せてもらえますか?」
すぐにデータを送り、即座に電話で確認。
「大丈夫です。対応します」
その瞬間、肩の力が一気に抜けた。
第4章:確認と調整、そしてスピード勝負の進行管理
国内業者と連携しながら、最終確認に入る。
・納品日は厳守できるか ・品質はどの程度か ・チャーター便の手配方法とコスト
細かい点まで詰め、顧客にも逐一報告。
顧客も「ありがとうございます、本当に助かります」と感謝の言葉をくれた。
ここで気を抜けば台無しになる。
配送手配、仕上がりチェック、納品先との時間調整まで、全てをスピード感を持って進めた。
第5章:納品当日、奇跡の間に合わせ
そして、納品当日。
チャーター便が到着。 開封、内容確認、問題なし。
すぐに顧客に納品し、無事に完了。
あとから聞いた話では、追加1000個がイベントの成否を左右する重要なアイテムだったらしい。
「今回の対応、本当にすごかったです」 そう言ってもらえた時、進行管理としての達成感がこみ上げてきた。
第6章:地道な努力がピンチを救う。進行管理の本質とは?
派手なスキルや華やかな提案力が目立つ広告業界において、進行管理の地道な努力は目立ちにくい。
しかし、「最後まであきらめない」「淡々と作業をこなす」「一つずつ確認し、調整し、実行する」
これこそが、ピンチの場面で結果を出せる力だと私は思っている。
おわりに:「調整力」こそが進行管理の武器になる
今回のようなケースは頻繁には起きない。 だが、いつどんなトラブルが起きても対応できるよう、日頃の情報収集・判断力・粘り強さが求められる。
進行管理の仕事は、ただスケジュールを守るだけではない。
人と人、会社と会社をつなぎながら、トラブルを調整し、現場を動かす“潤滑油”のような存在だ。
だからこそ、地道な努力の積み重ねが、結果として「大どんでん返し」を生むことがある。
もし、あなたが今、進行管理という仕事に興味があるなら。 ぜひこの「調整力の持つパワー」を、どこかで実感してほしい。
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