はじめに|調整力があれば、現場も人生も回せる
広告の進行管理を20年やってきた僕が、身をもって感じていること。それは、調整力はどんな資格よりも、どんなスキルよりも仕事をラクにするということです。
スケジュールを引くだけじゃない。
納期を守るだけじゃない。
「人」を動かせるかどうか、それが調整力の真価です。
僕はこのスキルのおかげで、
- 営業から「お前がいないと無理」と言われ
- デザイナーから「〇〇さんにしか任せたくない」と言われ
- クライアントから「この人が一番信頼できる」と言われてきました。
調整力は、空気を読んで黙るスキルじゃない。
必要なことを、必要なタイミングで、必要な人に伝える技術です。
では、具体的にどういう力なのか?どうやって鍛えたのか?僕の現場体験をベースに語ります。
【1】意思疎通力|話さずに伝えるのは無理。だから「伝える力」が要る
新人の頃、僕は空気を読んで飲み込むタイプでした。
「わざわざ言わなくてもいいか」「波風立てたくない」──その結果、
大事故になったことがあります。
納品2日前に、クライアントとデザイナーの認識がズレたまま走っていたことが発覚。修正不可。
それ以来、僕は意識を変えました。
“確認したつもり”を撲滅する。
相手の言葉を一度メモして、メールで“再確認”。
「このニュアンスで合ってますか?」と必ず聞き返す。
誰かが黙っていても、自分だけは全体像を把握しておく。
それが進行管理の仕事だと痛感した出来事でした。
【2】課題認識力|一歩先を読む。それだけで信頼が生まれる
あるとき、外部のライターから上がってきた原稿に、明らかに「ブランドトーンと違う表現」があった。
でも営業はそのまま進行しようとしていた。
僕はその場で、「これ、トラブルになる」と判断して、修正前提でクライアントに再確認を依頼。
結果的に、その表現はNG。
ギリギリのタイミングで修正できた。
その時、営業から言われたのが「気づいたお前がいて助かった」。
進行管理は「与えられたことをこなす」だけでは信頼されません。
未然にミスを防ぐ力が、次の仕事を呼び込むのです。
【3】リーダーシップ|「嫌われずに舵を取る」力
現場はナイーブな人の集まり。
言い方を間違えればすぐ空気がギスギスする。
僕が意識してきたのは、“まず相手に不満を言わせる”こと。
そして、「じゃあ、それを考慮した上でこうしよう」と“折衷案を示す”こと。
たとえば、営業が「明日までに仕上げてくれ」と無茶を言った時。
デザイナーの不満を聞いたあとで、
「ここまでは明日で、残りは明後日でどうですか?」
という折り方を提示する。
主導権は持つけど、押しつけはしない。
リーダーシップとは、支配じゃなくて合意形成だと思っています。
【4】協調性|仲良くなる必要はない、でも信頼は必要
僕は特別フレンドリーでも、盛り上げ役でもありません。
でも、「この人は敵じゃない」と思われることだけは徹底してきました。
- 相手が忙しいときは、資料を事前に要点だけまとめる
- 逆に、時間が取れるときは相手の愚痴をひたすら聞く
どんな相手でも、「楽させてくれる人」は味方に見えます。
協調性とは、人間関係の潤滑油ではなく、摩擦を起こさない技術です。
【5】交渉力|「No」をどう伝えるかが、信頼に変わる
進行管理が一番つらいのは、
「できません」と言わなければならないとき。
でも、そのまま伝えてしまうと関係が壊れます。
だから僕はいつも、代替案を2つ用意して臨みます。
例:
❌「明日は無理です」
⭕「明日午前中の仮納品なら可能です。それか、明後日なら正式版を出せます」
“NO”だけじゃ人は動かない。
選択肢を与えることで、相手は納得してくれるのです。
【実践編】調整力を伸ばすために僕がやってきた5つのこと
- トラブルの「予兆日誌」をつける
→どんなときに何が起きたかを記録。パターン化する。 - 相手の仕事を体験してみる
→デザイナーのデータ出力や営業の打ち合わせに同席。 - 言いづらいことを、10通り書き出してみる
→伝え方にバリエーションを持たせる練習。 - 人の反応を「感情メモ」として記録する
→誰がどんな言葉に敏感か、ログを残す。 - 褒めるより、まず理解することを優先する
→相手の“背景”に目を向けることで信頼が深まる。
おわりに|「調整力」はあなたの武器になる
調整力は、場を仕切る力でも、命令する力でもありません。
人と人を“つなぐ”力です。
調整力があれば、チームはまとまり、仕事は回り、あなたの評価も上がります。
僕はこのスキルで、何度もピンチを乗り越えてきました。
今悩んでいる人も、地味だけど地道に、積み上げていけば必ず武器になる。
そのことを、僕の経験を通して伝えたいです。
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